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BLS(一次救命処置)トレーニング開発の経緯と想い

(左から)
サンライズジャパン病院 Deputy IT Manager LONG Ty氏
サンライズジャパン病院 ER/ICU Nurse KHORN Panha氏
サンライズジャパン病院 ER Doctor HENG Soviro氏
TRION(カンボジア開発会社) 境 大輔氏
サンライズジャパン病院 CEO 鎌田 圭也氏
サンライズジャパン病院 取締役 Chief Clinical Director 岡和田 学氏
積木製作 常務取締役 赤崎 信也
サンライズジャパン病院 Doctor KOV Honghy氏
サンライズジャパン病院 IT Consultant 吉見 崇宏氏

カンボジアで日本式の高度な医療を提供するサンライズジャパン病院と
積木製作が共同開発した「BLS(一次救命措置)VRトレーニング」
開発に至った経緯や想いを、現場、医療、経営といった各視点から伺う事ができました。

今回VRを採用した経緯についてお聞かせ下さい。

岡和田氏AIやDXもそうですが、VRを始めとしたテクノロジーは途上国の方が普及するのではないかと考えています。カンボジアの国民性として注意深さが低いというテスト結果が出ており、体験を通して経験する事が大事だと思っています。VRは体験型であるので、体験を通して考え方が変化する可能性があると思っています。そういう意味ではもともと注意深い日本人に対しての教育よりもインパクトがあるのではないかと考えています。こういったVRを使って、デジタルを医療にどんどん取り込んでいきたい。それを当たり前にして、医療レベルを上げていきたいと考えたのが開発を決めたポイントになります。

吉見氏カンボジアというのは歴史的な要因が大きいのですが、カンボジア医師を信用しないという文化があります。そういった考えをVRのような新しいものを使いながら変えていきたいという思いを持っています。また、医療に対する意識、習慣が無く、健康診断さえ受けたことが無い方が多くいます。手遅れな状態で病院に来る方が非常に多く、そのような文化をVR活用して変えていきたいと考えました。

医療現場では様々な課題がありますが、BLS(一次救命措置)をVR化した理由、意義についてお聞かせ下さい。

鎌田氏BLSは日系の会社からの需要も高く、トレーニングを受けたいという要望もあります。一時救命措置は医療従事者が到着する前の措置を一般の方が実施する場合が多く、一般の方が適切な行動をとって頂ければ、助ける事ができる命もあるのではないかと思っています。またこういう新しい事をやっているという事を患者さんに対して見せるという事も非常に大事ではないかと思っています。やはり患者さんから選ばれる病院でないといけないと考えています。

岡和田氏医療従事者以外の人に対しても教育できるものであり、非常に意義が高いと思います。我々サンライズ病院がカンボジアいる事によって、その様な知識が一気に広がるのではないか、社会的貢献に繋がるのではないかと考えております。

実際にVRが完成し、体験した感想はいかがでしたでしょうか。

岡和田氏臨場感が非常に高く、空間や体験自体が非常にリアルに構築されているなと感じました。我々はいつもドクターや、現場スタッフを教育する側ですがその視点として、VR体験は一人でやるので、トレーニングに集中してもらえるのではないかと思っています。また最終的に自身の行動に対してフィードバック、スコアも出るので教育としては非常に良いのではないかと考えています。課題として感じたのは、進行の際にガイダンスを待つ必要があるので、もう少しスムーズに実施できないかという点と、CPRの判定の精度をもっと上げていけたらと感じています。

今後の展開、VRに期待する事はございますでしょうか?

岡和田氏メタバースを使用した検診や、リハビリ、医療の安全にも使えるのではないかと考えています。そういう事ができれば、医療の事故が減らしていける事ができるのではないかと考えています。また、MRも興味を持っています。日本でも手術の現場で事例が出てきていますが、我々も取り組むべきだと思っています。

吉見氏3Dプリンターを使用して、検査画像を3D化するという事を検討したことがあるのですが、費用が非常に高くなるという事で頓挫した経験があります。そのような事もバーチャルであれば迅速に安価に実現する事ができるのはないかと考えています。

鎌田氏当院では難しい技術を要する手術は日本人医師が担当しており、症例によっては日本から専門の医師を招聘し対応しています。VRやその他の技術を用いて、遠隔でデータを共有することで、手技の共有や、手術の事前確認などできるようになればと考えています。
医療設備のメンテナンスについても、現在定期メンテナンスの度に、日本から臨床工学士が出張して対応しています。カンボジアには臨床工学士の資格がないので、技術を定着させるための教材としてVRが利用できるのではないかと考えています。
また、カンボジアでは検査技師が養成課程で超音波検査の手順を学びません。カンボジアでは医師および一部の放射線技師が扱える程度で、幅広い病気の発見に繋がる超音波検査のできる人材の育成は急務です。これについてもVRトレーニングで解決できないものかと期待してしまいます。
先ほど申し上げた臨床工学士と合わせて、当院としてこの2点はニーズが高いので、次に取り組む課題として検討出来ればと思っています。

現場からの視点。VRの可能性と課題について

KOV Honghy氏 LONG Ty氏  KHORN Panha氏  HENG Soviro氏

現在はどのような内容のトレーニングを受けてますでしょうか?

現場スタッフに対しての教育は講義と実践トレーニングの二つに分かれています。実践トレーニングではBLSについても実施しています。講義では座学でスライド等を使って講義をしています。BLSの場合は主にAEDを使用しています。マネキンを1体用意して患者の反応を確認するようなシミュレーションを行い、AEDの取り付け方やCPRなどを実施しています。

VRを体験して感じた事、課題について教えて頂けますでしょうか?

実体験に近い体験ができると感じました。また、このトレーニングでは一時救命の際に最初にやらなければいけない事が確認できるので、良いのではないかと思います。
医療スタッフではではない人達に実際の行動を身近に感じてもらえる点が今回のBLS体験の意義ではないかと思いました。一般の方は医療スタッフの様にBLSが必要になる場面に遭遇する事が無いので、VRで体験した後、その様な場面に将来遭遇した時にどうすれば良いか想像できるようになるのではないかと思います。
課題としては、ヘッドセットが重いという事と、少し酔うという点があります。また、CPRの判定が不正確であるのでないかと感じました。VRだけでは技術的な部分を習得するのは不十分で、実体験と組み合わせたトレーニングが必要ではないかと思います。それにより、VRでは手順を学び、技術的な部分はその他の訓練で補う事ができると感じています。